伊勢神宮の外宮、豊受大神宮では、毎日朝夕欠かすことなく、神様に「神饌(しんせん)」というお食事が献上されています。豊受大神は内宮の天照大御神のお食事を司る御饌大御神(みけつかみ)であり、衣食住、産業の守り神。今から約千五百年前に丹波国から現在の地にお迎えされ、以来、御垣内の御饌殿では一年三百六十五日絶えることなく、神様に食事を供える日別朝夕大御饌祭(ひごとあさゆうおおみけさい)が続けられています。
神饌は米や酒とともに、山の幸、里の幸、海の幸といった様々なものが用意されます。奉納されたもののほか、神宮神田や御園、千鯛調整所などで自給自足された食材を、丁寧に無駄なく調理。質素でありながらも、栄養価やバランスが考えられた献立はまさに和食のルーツ、日本人の食の原点と言えるでしょう。
お伊勢マルシェでは、水揚げの場所や方法から食品ができるまで、すべてのトレーサビリティ情報を公開。取り扱う食材や加工食品などを神前に奉納し、海の恵みに感謝し、海を、人を、食を育てていくことを約束しています。
神饌の文化、先人の知恵と経験を大切にし、海の恵みを丁寧に無駄なく調理した献立などを通じて、正直な食づくりで多くのいのちを紡いでいきたい。そして、新時代が可能にした技と心をもって、不易流行の理念を忘れることなく、私たちは歩んでまいります。
∗『不易流行』いつまでも変化しない本質的なものの中にも、新しく変化を重ねているものを取り入れていくこと。また、新しさを求めて変化を重ねていく流行性こそが不易の本質であること。三重県に生まれた俳聖・松尾芭蕉が「奥の細道」の旅の間に体得した概念。